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前回の記事では、積立を始めた後に下落が来ても続けるための考え方を書きました。
ここまでで「始める理由」と「続ける方法」は書いたので、今回は「どの制度から始めるか」という話です。
NISA、企業型DC、iDeCo。名前は聞くけれど、どれを優先すればいいのか分かりにくいと思います。私自身も最初は迷いました。
さらに2026年12月から制度が変わり、拠出できる金額の上限が大きく増えます。このタイミングで一度整理しておくと判断しやすくなるので、私の考え方をまとめました。
この記事はエージェントグローの社員が使える制度を前提にした、私個人の考え方です。企業型DCの内容は会社によって大きく異なるため、他社にお勤めの方は自社の制度を確認してください。
結論:NISA → 企業型DC → iDeCo
エージェントグローの社員であれば、私は次の順番をおすすめします。
おすすめの優先順位
1. NISA(いつでも引き出せる・手数料も手間もかからない)
2. 企業型DC(オルカンが選べる・手数料なし・手続きは会社任せ)
3. iDeCo(手数料と申請の手間がかかる)
理由はシンプルで、使い勝手がいい順だからです。
ただしこの順番は「企業型DCで良い商品が選べる」ことが前提です。会社の企業型DCに手数料の高い商品しかない場合は、iDeCoを先に検討したほうがいいと思います。理由は後で詳しく書きます。
実際に進める順番は5ステップ
優先順位は決まりましたが、「NISAから始める」といっても、いきなり大きな金額を積み立てる必要はありません。
実際に進めるときは、次の5ステップをおすすめします。
- NISAで月100円の積立設定をする
- 生活防衛費と特別費を現金で貯める
- NISAの積立額を少しずつ増やす
- NISAが積立額月3万円を超えたあたりで企業型DCを検討する
- NISAと企業型DCの金額を徐々に引き上げる
それぞれ補足します。
ステップ1:まず月100円で始める
最初にやるのは、口座を作って積立の設定まで終わらせることです。金額は100円で構いません。
目的はお金を増やすことではなく、手続きを済ませてしまうことと、値動きに慣れることです。100円なら家計にはほとんど影響しませんし、「まだ貯金が足りないから」と先延ばしにする理由もなくなります。
投資で一番大きなハードルは、口座開設と最初の設定です。ここを先に越えておくと、後の判断がすべて「金額を変えるだけ」になります。
ステップ2:現金を貯めるのはここ
100円の積立を続けながら、生活防衛費と特別費を現金で用意します。
- 生活防衛費:病気や失業で収入が止まっても生活できるお金(生活費の半年〜2年分)
- 特別費:毎月ではないけれど必ず出ていくお金(冠婚葬祭、家電の買い替え、車検、帰省費用など)
5つのステップの中で一番時間がかかるのがここです。ただ積立設定はもう終わっているので、「投資を始める」というハードルを越えた状態で貯金に集中できます。
ステップ3〜5:少しずつ引き上げる
現金の準備ができたら、NISAの積立額を無理のない範囲で増やしていきます。目安として月3万円を超えたあたりから、企業型DCの個人拠出を検討します。
企業型DCを後回しにする理由は、入れたお金が原則60歳まで引き出せないからです。
家計がかつかつの状態で多く入れてしまうと、急な出費に対応できません。結果として生活が苦しくなり、投資そのものが続かなくなります。順番を守れば、この失敗は避けられます。
逆に言えば、余裕ができてからの企業型DCは自信を持っておすすめできます。税制優遇が大きいからです。
なぜNISAが最優先なのか
NISAを最優先にしている一番の理由は、いつでも引き出せることです。
運用益が非課税になる点は企業型DCやiDeCoと同じですが、NISAには「60歳まで引き出せない」という縛りがありません。急にまとまったお金が必要になったときに対応できる安心感は大きいです。
それ以外にもNISAには使いやすさがあります。
- 口座管理手数料がかからない
- 商品を自由に選べる(会社が用意した範囲に限定されない)
- 年末調整や確定申告の手続きが不要
まずはNISAで積立の習慣を作り、下落を経験しながら慣れていく。その次のステップとして企業型DCやiDeCoを考える、という流れが現実的だと思います。
なぜ企業型DCがiDeCoより先なのか
NISAの次は企業型DCをおすすめしています。理由は3つあります。
① 良い商品が選べる
エージェントグローの企業型DCでは、eMAXIS Slim 全世界株式(オール・カントリー)、いわゆるオルカンが選べます。S&P500のインデックスファンドも選べます。
企業型DCの弱点は「会社が用意した商品からしか選べない」ことですが、低コストのインデックスファンドが用意されているなら、その弱点はほとんど気になりません。
逆に言うと、会社の企業型DCに手数料の高い商品しかない場合は、このメリットがなくなります。
その場合はiDeCoを先に検討したほうがいいと思います。iDeCoなら金融機関も商品も自分で選べるので、低コストのインデックスファンドを確実に選べるからです。口座の手数料を払ってでも、良い商品で運用できるメリットのほうが大きくなります。
ご自身の会社の企業型DCで何が選べるかは、一度確認してみてください。判断の分かれ目はここです。
② 口座の手数料がかからない
iDeCoは自分で口座を作る制度なので、口座の維持に手数料がかかります。最低でも次の金額です。
- 加入時(初回のみ):2,829円
- 毎月:171円(国民年金基金連合会105円+信託銀行66円)
毎月171円は少額に見えますが、30年続けると6万円を超えます。企業型DCは会社が口座を用意してくれるので、この費用がかかりません。
③ 申請の手間がかからない
iDeCoで払った掛金は自分で申告しないと税金が安くなりません。毎年、年末調整か確定申告で手続きが必要です。
企業型DCは給与から天引きされ、会社側で処理されます。自分で何もしなくていいという差は、続けるうえで思っている以上に大きいです。
同じ5万円でも、受け取り方で約1万円変わる
会社によっては、企業型DCへの拠出のための手当があらかじめ用意されていることがあります。
その手当を現金で受け取るか、DCに入れるか選べるということです。
そして0円か5万円かの二択ではありません。0〜5万円のあいだで、5,000円きざみに自分で金額を決められます。
全額をDCに入れることも、1万円だけ入れて残りを現金で受け取ることもできます。
ここでは分かりやすくするために、5万円すべてをDCに入れた場合で比べてみます。
同じ5万円の受け取り方
現金で受け取る → 税金と社会保険料が引かれて、手元に残るのは 約39,700円
DCに入れる → 50,000円がまるごと積み立てられる
同じ5万円でも、受け取り方を変えるだけで月に約1万円の差が出ます。
ひとつ注意したいのは、この金額を変更できるのは年に1回だけという点です。設定できる時期は会社ごとに決められています。
思い立ったときにすぐ変えられるわけではないので、案内が来たタイミングで忘れずに検討してください。
差が生まれるのは、DCに入れた分は税金と社会保険料の計算のもとになる金額に含まれないからです。
SBI証券のシミュレーションで、30歳・月給30万円・東京都在住・月5万円を拠出した場合を計算すると、軽くなる金額はこうなります。
| 軽くなるもの | 金額(月あたり) |
|---|---|
| 社会保険料(厚生年金・健康保険・雇用保険) | 約5,900円 |
| 税金(所得税・住民税) | 約4,400円 |
| 合計 | 約10,300円 |
出典:SBI証券 企業型確定拠出年金 加入効果シミュレーション
別の見方をすると、月5万円を拠出しても、実際に手取りが減るのは約4万円ということです。5万円まるまる減るわけではありません。差額の約1万円は、税金と社会保険料が軽くなった分です。
ただしこれは月収30万円で計算した場合の金額で、誰でも同じになるわけではありません。
年齢・給与・お住まいの地域によって変わります。
なお社会保険料まで安くなるかは会社によって違うので、勤務先の制度の資料で確認してみてください。
一方iDeCoで軽くなるのは税金だけで、社会保険料は変わりません。ここも企業型DCを先にしている理由のひとつです。
詳細なシミュレーションは、ご自身の数字で行ってください。上の出典のリンクから、年齢や給与を入れ替えて試せます。
2026年12月から拠出できる上限が増える
ここまでの話に関係する大きな制度改正が控えています。
厚生労働省の資料によると、2026年12月から確定拠出年金の拠出できる上限が引き上げられます。
| 区分 | 改正後の上限 | 増える額 |
|---|---|---|
| 会社員(企業年金あり) | 月6.2万円 | 最大4.2万円増 |
| 会社員(企業年金なし) | 月6.2万円 | 3.9万円増 |
ポイントは、企業型DCとiDeCoを合わせて月6.2万円までという形になることです。これまであった「iDeCo単体の上限」がなくなり、企業型DCで使い切れなかった枠をiDeCoで埋められるようになります。
あわせて、加入できる年齢の上限も70歳未満まで広がります。
掛金としては2026年12月分(2027年1月の引き落とし分)からが対象です。
ただしここは誤解しやすいので補足します。これは法律で決められた上限が上がるという話です。会社の企業型DCで実際にいくらまで拠出できるかは、それぞれの会社の規約で決まっています。
つまり法律の上限が上がっても、会社の規約が変わらなければ拠出できる金額はこれまでどおりです。自分の会社がどう対応するかは、社内のお知らせを待つことになります。
いずれにせよ、選択肢が広がる方向の改正です。自分がいまいくら拠出しているかを把握しておくと、案内が来たときにすぐ判断できます。
注意しておきたいこと
企業型DCは魅力的な制度ですが、知っておいたほうがいい点もあります。
① 社会保険料が下がると、将来もらえる年金も少し減る
社会保険料が軽くなるのはメリットですが、厚生年金の保険料が下がる=将来受け取る厚生年金も少し減るということです。
また、傷病手当金・出産手当金・育児休業給付金なども給与額をもとに計算されるため、影響する可能性があります。近い将来こうした給付を受ける予定がある方は、拠出額を決める前に確認しておくと安心です。
② 60歳まで引き出せない
繰り返しになりますが、これが一番大きな制約です。だからこそ生活防衛費と特別費が先です。
③ 制度の中身は会社によって違う
企業型DCの掛金の出し方や上限額は会社ごとに決まっています。この記事の内容をそのまま自社に当てはめず、社内の担当部署や制度の資料で確認してください。
まとめ
- 進め方は、NISAで月100円の積立設定 → 生活防衛費と特別費を貯める → NISAを少しずつ増額 → 月3万円を超えたら企業型DCを検討
- 最初に月100円で設定してしまうと、口座開設というハードルを先に越えられる
- NISAが最優先なのは、いつでも引き出せて手数料も手間もかからないから
- 企業型DCがiDeCoより先なのは、オルカンが選べて手数料がなく、手続きも会社任せにできるから
- 会社の企業型DCに手数料の高い商品しかない場合は、iDeCoを先に検討したほうがいい
- 拠出のための手当は、現金で受け取ると約39,700円、DCに入れると50,000円。受け取り方で月に約1万円変わる
- 月5万円を拠出しても手取りが減るのは約4万円(月収30万円で計算した場合)
- 拠出額は0〜5万円のあいだで5,000円きざみに選べる。少額から始められるが、変更は年に1回だけ
- 2026年12月から企業型DCとiDeCoを合わせて月6.2万円まで拠出できるようになる
制度が複雑で「難しそう」と感じて手をつけない方も多いと思いますが、優先順位さえ決まっていれば、あとは上から順にやっていくだけです。
まずはNISAから。そして余裕ができたら企業型DCへ。この2つで老後資金の準備としては十分だと私は考えています。
※この記事は2026年7月時点の情報にもとづいています。制度の内容や金額は今後変更される可能性があるため、実際に手続きをする際は公式サイトや社内の資料で最新の情報をご確認ください。
※企業型DCの制度内容は会社によって異なります。
※この記事は個人の考えにもとづくものです。投資判断はご自身の責任でお願いします。
参考
インデックス投資で下落が来ても売らないための考え方|含み益バリアという概念