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こんにちは、みやしょーです。
以前の記事では、下落が来ても売らないための考え方を書きました。
今回はその手前の話です。
そもそも、いま起きている下げはどれくらい大きいことなのか。
実は下落には数字で決まった呼び名があります。
高値から10%下がれば「調整」、20%下がれば「暴落(弱気相場)」です。
この線引きを知っておくと、ニュースを見て必要以上に慌てずに済みます。
「下落」には2つのものさしがある
「今日は株価が下落しました」と言うとき、その中身はバラバラです。
1日で2%下がったことを「下落した」と言う人もいます。
一方、リーマンショックのように高値から57%下がったことも「下落」と呼ばれます。
片方は1日の出来事で、もう片方は1年5ヶ月かけて進んだ出来事です。
同じ言葉ですが、測っているものも規模もまるで違います。
ここが分かりにくさの正体でした。
下落には、まったく別の2つのものさしがあるからです。
下落を測る2つのものさし
① 高値からの下落率(積み重なった下げ)
→ いまが調整なのか暴落なのかが決まる
② 1日の下落率(その日1日の下げ)
→ その日が日常なのか異常事態なのかが決まる
この2つを混ぜて考えると混乱します。順番に見ていきます。
高値からの下落率で呼び名が決まる
まず1つめのものさしです。
こちらは直近1年(52週)の高値からどれだけ下がったかで呼び名が決まります。
| 高値からの下落率 | 呼び名 |
|---|---|
| 10%未満 | 特に名前はない(通常の値動き) |
| 10%以上 | 調整(調整局面) |
| 20%以上 | 弱気相場(一般に「暴落」と呼ばれる) |
ニュースで「弱気相場入り」と報じられるのは、この20%を超えたときです。
日本経済新聞でも「株価下落率2割超え」が弱気相場入りの目安として説明されています。
つまり調整と暴落の境目は、10%と20%。感覚ではなく、数字で決まっています。
ただしこちらは法律などで定められたものではなく、市場で広く使われている慣習的な区分です。
次に見る2つめのものさしとは、その点が違います。
どのくらいの頻度で起きるのか
では、それぞれどのくらいの頻度で起きるのでしょうか。
米国の運用会社キャピタル・グループが、S&P500の1954年から2024年までの70年分を集計しています。
| 下落幅 | 起きる頻度 | 平均の期間 |
|---|---|---|
| 5%以上 | 年に約2回 | 約46日 |
| 10%以上(調整) | 約18ヶ月に1回 | 約135日 |
| 15%以上 | 約3年に1回 | 約256日 |
| 20%以上(弱気相場) | 約6年に1回 | 約402日 |
出典:Capital Group「Market declines — A little history」(英語・S&P500・1954〜2024年)
この表を見て、私は少し気が楽になりました。
調整は約18ヶ月に1回です。
老後資金として30年積み立てるなら、その間に20回ほど経験する計算になります。
珍しい事件ではなく、定期的に来るものだと分かります。
弱気相場(暴落)も約6年に1回。
30年なら5回です。
こちらも「いつか来るもの」として最初から織り込んでおけます。
1日の値動きは、何%からが異常なのか
ここからが2つめのものさし、1日の下落率です。
実はこちらには市場が決めた明確な線があります。
米国株式市場のサーキットブレーカーという仕組みです。
S&P500が前日の終値から一定以上下がると、取引そのものが止まります。
| 1日の下落率 | 措置 |
|---|---|
| 7% | 15分以上の取引停止 |
| 13% | さらに15分以上の取引停止 |
| 20% | その日は取引終了 |
出典:ニューヨーク証券取引所「Market-Wide Circuit Breakers FAQ」(英語・7%と13%は取引終了間際には発動しません)
つまり市場自体が「1日7%からは異常事態」と定義しているわけです。
直近では2020年3月のコロナショックで、3月9日・12日・16日・18日と、1ヶ月のあいだに4回も発動しました。
それ以前は20年以上発動していなかったので、いかに異常な事態だったかが分かります。
そして、こうした日は本当にめったに起きません。
1923年からの100年あまりで、1日の下落率が大きかった日を並べるとこうなります。
| 日付 | 1日の下落率 |
|---|---|
| 1987年10月19日(ブラックマンデー) | -20.5% |
| 1929年10月28日(世界恐慌) | -12.3% |
| 2020年3月16日(コロナショック) | -12.0% |
| 2020年3月12日(コロナショック) | -9.5% |
| 2008年10月15日(リーマンショック) | -9.0% |
出典:Wikipedia「List of largest daily changes in the S&P 500 Index」(英語・S&P500の算出開始は1957年のため、それ以前は前身の指数)
1日に9%以上下げた日は、100年あまりでわずか8日だけです。
すべて教科書に載るような出来事ばかりでした。
ここから、こんな目安が見えてきます。
1日の下落率の目安
-1% … 日常
-2% … やや大きい日
-3% … ニュースになる
-5% … 市場が騒然とする
-7% … 取引が止まる(異常事態)
-10%超 … 歴史に残る
1日2%の下げは、毎日値動きを見ていると大事件に見えます。でも位置づけとしては「やや大きい日常」です。
そもそもインデックス投資では積立の設定さえしてしまえば、毎日値動きを見る必要はありません。
見ないほうが続けやすいと思います。
大きな暴落ほど、実はゆっくり進む
「2%の下げが毎日続いたらどうしよう」と不安になるかもしれません。
私も最初はそう考えていました。
でも過去の暴落を1日あたりに直してみると、意外な事実が見えてきます。
| 暴落 | 下落期間 | 下落率 | 1日あたり |
|---|---|---|---|
| コロナショック | 1ヶ月 | -33.9% | 約-2% |
| ブラックマンデー | 3ヶ月 | -33.5% | 約-0.6% |
| リーマンショック | 1年5ヶ月 | -56.8% | 約-0.2% |
| ITバブル崩壊 | 2年7ヶ月 | -49.1% | 約-0.1% |
下落期間と下落率の出典:三井住友DSアセットマネジメント「米国株はいつ下げ止まるか」(1日あたりは月21営業日として筆者が計算)
「毎日2%下がる」に当てはまるのはコロナショックだけでした。しかもそれは史上最速の下落で、1ヶ月で底を打っています。
理由は逆算すると分かります。
毎日2%ずつ下がると、21営業日(約1ヶ月)で-35%、42営業日で-57%。
たった2ヶ月でリーマンショック級に到達してしまいます。
そんなペースは物理的に続きません。
そして一番意外だったのが、リーマンショックは1日あたり-0.2%だったことです。
最終的に57%も下がったのに、日々の値動きは驚くほど静かでした。
大きな暴落ほど、実はゆっくり進みます。ドカンと落ちる日は短期間で終わり、じわじわ進む下げは長く続く。
この関係を知っておくと、目の前の値動きに振り回されにくくなります。
違いを知ると、何が変わるのか
正直に言うと、やることは変わりません。
調整でも弱気相場でも、インデックスの積立投資なら「止めずに続ける」で同じです。
変わるのは気持ちのほうです。
いま起きているのが名前もつかない揺れなのか、18ヶ月に1回の調整なのか、6年に1回の弱気相場なのか。
2つのものさしを持っていれば自分で見分けられるようになります。
以前の記事で書いたとおり、S&P500は過去の大きな暴落からも最長で約7年かけて回復してきました。
調整なら平均135日、つまり4ヶ月半ほどで終わっています。
知らずに耐えるのと、分かって待つのとでは、同じ時間でもまったく違います。
ニュースの見出しに「暴落」と書いてあっても、下落率を確認すれば実際は調整ですらないことがあります。
この確認ができるだけで、振り回される回数がぐっと減ります。
まとめ
- 下落には「高値からの下落率」と「1日の下落率」という2つのものさしがある
- 高値から10%以上で「調整」、20%以上で「弱気相場(暴落)」
- 調整は約18ヶ月に1回、弱気相場は約6年に1回。30年積み立てるなら20回と5回は通る
- 1日の下落は7%で取引が止まる。ここが市場の決めた「異常事態」の線
- 1日に9%以上下げた日は、100年あまりでわずか8日だけ
- 1日2%の下げは「やや大きい日常」の範囲
- 毎日2%が続いたのは史上最速のコロナショックのみで、それも1ヶ月で終わった
- リーマンショックは1日あたり-0.2%。大きな暴落ほど、実はゆっくり進む
下落そのものをなくすことはできません。
でも「これはどれくらいの下げなのか」を自分で判断できるようになることは、今日からできます。
次に下落のニュースを見たときは、まず下落率を確認してみてください。
多くの場合、名前すらつかない揺れだと思います。
※この記事はインデックスファンドの積立投資を前提にしています。
個別株など別の手法では、当てはまらない場合があります。
※頻度や期間は過去の実績であり、将来を保証するものではありません。
※この記事は個人の考えにもとづくものです。投資判断はご自身の責任でお願いします。
参考
Capital Group「Market declines — A little history」
日本経済新聞「弱気相場入りとは 株価下落率2割超え、市場の悲観映す」
ニューヨーク証券取引所「Market-Wide Circuit Breakers FAQ」
三井住友DSアセットマネジメント「米国株はいつ下げ止まるか」
Wikipedia「List of largest daily changes in the S&P 500 Index」
インデックス投資で下落が来ても売らないための考え方|含み益バリアという概念