ITエンジニア不足の現状と今後とは?解決方法や対策を紹介

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ITエンジニア不足の現状と今後とは?解決方法や対策を紹介

生産年齢人口が減少している日本では、IT人材の供給が追いつかず、エンジニア不足が深刻化しているといわれています。しかし、本当にIT人材、特にITエンジニアは不足しているのでしょうか。また、将来的に不足の状況が続くのかも気になるところです。

そこで今回は、ITエンジニアが実際に不足しているのかどうか、そして、IT人材不足を解決するためにできることについて解説します。

ITエンジニアは実際に不足しているのか

現在、ITエンジニアは不足している状態にあり、将来的にはさらにその状況が深刻化すると予測されています。

経済産業省の「IT人材需給に関する調査」によると、2018年時点で22万人ものIT人材が不足しており、2030年には最大で約79万人のIT人材不足が試算されています。

参考:経済産業省「IT人材需給に関する調査」

人材不足の背景にはIT分野の市場成長があります。デジタル化が進む現代では、IT分野の技術力は企業の競争力を左右する重要な要素となっています。そのため、ITエンジニアの需要は増加傾向にある一方で、供給がまったく追いついていないという状況です。

この問題に対して多くの企業は、優秀なITエンジニアの確保と定着のために、働きやすい環境づくりやキャリアパス制度の充実、残業時間の削減など、多様な働き方を尊重する企業風土の整備に努めています。

ITエンジニアが不足している要因とは?

IT市場においてITエンジニアが不足しているのは先に説明した通りですが、その要因としてIT市場の成長のほかにも、いくつかの点が考えられます。

改めて、ITエンジニアが不足している要因をまとめると、主に以下の4つが挙げられます。

・IT市場が急成長している

・業務のIT化に取り組む企業が増えている

・少子高齢化により生産年齢人口が減少している

・IT人材が即戦力になるまでに時間がかかる

それぞれについて詳しく見ていきましょう。

IT市場が急成長している

先にも触れたように、ITエンジニアの人材不足の大きな要因のひとつは、IT市場自体の急速な成長です。近年、AI(人工知能)、ビッグデータ分析、クラウドコンピューティングなど、最先端技術の進展によって、IT技術を活用した新たなビジネスやサービスが続々と生まれており、対応できるITエンジニアの需要が急増しています。

また、一次産業である林業、漁業、農業などをはじめ、これまでIT業界と縁の浅かった業界においてもITを活用する動きが活発になったことも、エンジニア不足に拍車をかけているのが現状です。

しかし、短期間で急激に需要が増えると、それに対応する人材を育てるのが難しくなります。ITエンジニアに求められるスキルは日々変化し、最新の技術を学び続ける必要があるため、企業の教育体制の整備や人材育成の取り組みが追いついていないのです。

業務のIT化に取り組む企業が増えている

企業の規模や業種に関係なく、多くの企業で業務のIT化が進んでいることも、IT人材が不足している一因となっています。

これまでは、大企業を中心に業務のIT化が進められていました。しかし、独立行政法人情報処理推進機構が実施した「デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2022年度)」によると、従業員数が300名以下の企業においても、積極的に業務のIT化(DX)が進められていることが明らかになりました。2021年度調査と比較しても、300名以下の企業(事業会社)でIT化を実施して成果が出ていると回答した企業の割合が72.6%から78.0%に増加しています。

参考:IPA 独立行政法人 情報処理推進機構「デジタル時代のスキル変革等に関する調査(2022年度)」

中小企業においてもIT化のメリットは大きいです。例えば、クラウドコンピューティングは企業のITインフラストラクチャーの設置・運用コストを削減し、リモートワークも可能にします。一方、ビジネス用のソフトウェアやツールは、業務フローを効率化して生産性を向上させることが可能です。

このように、IT化はさまざまな方面から企業の生産性を高めることに寄与するため、企業規模を問わず急速に導入が拡大しました。

少子高齢化により生産年齢人口が減少している

少子高齢化による生産年齢人口の減少も、ITエンジニア不足につながっています。生産年齢人口とは、経済的な活動を担う高齢者や子どもを除く15歳から64歳までの人口のことを指しますが、この数値が年々減少しているのです。

内閣府の統計によると、1995年をピークに生産年齢人口は減少していて、2015年から2020年の間だけでも200万人以上減少しています。

働き手の人口の母数が減るということは、IT業界を含むすべての産業で人材が不足する理由につながります。このため、需要や人気の高いIT業界であっても、なかなか供給が追いつくほどの人材が集まらないのです。

IT人材が戦力になるまでに時間がかかる

業務に対応できるIT人材を育成するのには時間がかかる点も、ITエンジニア不足の原因のひとつです。

IT人材が戦力になるまでに時間がかかる理由はいくつかありますが、IT技術の進化の速さがまず挙げられます。日々新たな技術や考え方が生み出され、それらの最新技術を現場で活用するために、覚えるべき知識やスキルをアップデートする必要があります。

また、IT業界は専門性が高いため、その土壌や文化を理解しながら技術を使いこなせるようになるには、さらに時間が必要です。

現場によってシステムや使用するツールなどが異なるので、勉強した知識をそのまま活かせない可能性もあります。そのため、現場レベルの技術を手に入れるための適応期間が、ほかの業界よりも長くなりやすいのです。

エンジニアが不足しているIT分野とは?

IT分野と一言でいっても、その分野は幅広く業務も多岐にわたります。その中でも、特にITエンジニアの人材不足が深刻な分野や、将来性があり需要が高くなる可能性のある分野について解説します。

AI(人工知能)

AI分野は、IT業界の中でも特に人材が不足しています。AI(人工知能)は近年急速に進化しており、その活用範囲は、自動運転や医療、製造業などビジネスのあらゆる部分におよんでいます。2022年後半から社会的なムーブメントとなっているChatGPTも、自然言語処理を活用した生成系AIです。

さらに、AIによるビッグデータ解析など、より高度なIT活用への期待が社会的に高まっていることも需要拡大の要因のひとつでしょう。

AIエンジニアは、AIのアルゴリズム設計や、それを実装・適用するためのプログラミング、そしてAIの学習・予測メカニズムの深い理解など、高度な知識と技術が求められます。そのため、質の高いAIエンジニアの育成は容易ではなく、需要に対して必要な人材供給が追いついていないのが現状です。

IoT

IoTとは「Internet of Things」の略で、日本語に訳すと「モノのインターネット」となり、身の回りのあらゆるモノがインターネットにつながるという概念を指します。自動車、家電、専用デバイスなど、さまざまなモノがネットワークにつながり、情報のやりとりをすることで新たな価値を生み出すことができる技術です。

一般家庭でのIoT活用はもちろん、農業、製造業、電力や土木分野でも遠隔操作や無人作業を実現するために活用されています。

IoT社会を実現するためには、高度なハードウェアやソフトウェアの専門知識、ネットワーク技術、データ解析能力など、多岐にわたるスキルが必要です。少しずつ技術者が育成されていますが、まだまだ不足しており、人材不足はしばらくの間続くことが予想されています。 

クラウドサービス

クラウドは、AIやデータサイエンス分野にとって必要不可欠な要素です。クラウドテクノロジーは、大量のデータへのアクセス、処理、保存を容易にします。この機能を備えていることで、ビッグデータの活用がしやすくなり、結果的にAIやデータサイエンス領域の複雑な問題解決につながるデータ分析が可能となります。

クラウドエンジニアに求められることは、大量のデータを処理するためのシステムづくり、データの分析・解析を行うためのアルゴリズム構築、セキュリティやプライバシーの保護など、広範で深い知識と技術です。

ビッグデータとクラウドの利用がますます普及する中で、専門的な知識と技術を持ったエンジニアは今後よりいっそう重要となるでしょう。

セキュリティ

クラウドやIoTの普及にともない、サイバー攻撃から資産を守るセキュリティの確保・強化は、企業やサービスの信頼性を保つために重要な課題のひとつです。情報技術の進歩とともに、データ保護とプライバシーの重要性が高まり、企業は専門知識を持つセキュリティエンジニアを求めています。

しかし、この分野の専門家は少なく、求人市場では高度なスキルと経験を持つ人材が常に求められています。そのため、セキュリティエンジニアはIT分野で不足している業界のひとつです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)

企業からの需要が高いDX分野でも、人材不足が問題になっています。DXでは、ビジネスプロセスやビジネスモデル、企業文化などをデジタル技術を活用して変革するため、プログラミングスキルはもちろん、ビジネス理解力やリーダーシップ、プロジェクトマネジメント能力も必要です。

AI、IoT、クラウドなどの新しい技術を駆使して現場の課題を解決し、新たな事業価値を創り出せる幅広い知識を持ったDXエンジニアが求められています。

しかし、そのような多面的なスキルを持つエンジニアは現状では数が少なく、需要が高くなっています。

企業がIT人材不足解消のためにできること

企業がIT人材不足を解消するためにできる取り組みについて、以下の4つを紹介します。

・ITエンジニアの待遇改善

・社内のIT人材の育成

・さまざまな働き方を選べるようにする

・企業のイメージアップを図る

ITエンジニアの待遇改善

ITエンジニアの待遇面を改善することで、人材を確保しやすくなる可能性があります。

不満を抱えやすい待遇として挙げられるのは、例えば、長時間労働が多くなり、休日やプライベートの時間を確保できないことがあります。また、高いスキルを持っているITエンジニアに対して、そのスキルに見合った給与や報酬が支払われていないと本人が感じる場合、評価制度に問題があるかもしれません。

解決策としては、労働時間については、適切な労働時間への見直しや、運用を効率化する労務管理ツールの導入などがあります。また、適正な評価制度の導入、キャリアアップのための教育体制や研修制度を整えることがおすすめです。

加えて、仕事の充実感や達成感も考慮すべきであり、成功報酬の設定など、実績を評価する待遇改善も必要です。評価基準を明示し、身につけたスキルや成果が給与に適切に反映されるようにすることで、ITエンジニアが自分の評価に納得できる環境が実現します。

社内のIT人材の育成

社内の人材を育成し、IT人材として登用するのも有効な人材不足の解決策です。優秀な人材の獲得は企業間の競争率が激しく、思うようなペースとコストで採用できないケースも多いため、社内の人材をIT担当へと育成する企業も増えています。

就業時間内に、継続的な教育とトレーニングを提供することで、スキルの向上や新たな技術の学習を促せます。また、社内にIT分野に転身したい意志がある人材がいる場合、学んで成長できる機会を提供することで、スムーズに人材育成ができる可能性もあるでしょう。

インターンシップや研修生プログラムを設けることで、将来的にフルタイムで採用できる可能性を持つ人材を確保する方法もあります。

さらに、教育体制の整備だけではなく、キャリアパスを明確にしておくことで、従業員が自己改善やスキルアップの動機を持つことも重要です。これにより、従業員が自発的にスキルを磨き、企業全体としてのIT力を向上させることができます。

さまざまな働き方を選べるようにする

IT人材不足の解消に向けて、リモートワークやフレックスタイム制度を利用できるようにするなど、さまざまな働き方を提供することも重要です。

ITエンジニア業務は、パソコンとインターネット環境があれば、リモートワークで仕事が行いやすいというメリットがあります。そのため、遠隔地での勤務や、勤務時間の裁量を広げるなど、さまざまな働き方を採用できる可能性があるのです。

自由な働き方が可能な環境を整備することで、育児をしている人や家庭の事情で働き方が制限されている人も働きやすくなったり、人材の応募が増えたりすることにつながります。

企業のイメージアップを図る

企業イメージは、企業の価値観、社会的責任、給与や福利厚生、働きやすさなどを含む広範な要素によって形成されます。企業イメージが高いと、魅力的なIT人材が自社を選ぶ可能性が高まります。

企業イメージの向上には、自社の社会問題への取り組みを公表したり、従業員の働きやすさを実現するための施策を試みたりすることが有効です。また、具体的な給与や昇進の体系を明確にすることも欠かせません。

さらに、自社で新たな技術や方法論を積極的に導入し、その結果を社会に共有することで、IT分野における最先端の知識や技術を持っているというイメージを高めることができます。魅力的な企業イメージを形成し維持することで、IT人材不足の解消につながるといえるのです。

IT人材不足を解消するためにエンジニアの待遇を改善しよう

IT業界の深刻な人材不足解消のためには、スピーディーに何らかの対策を実行する必要があります。特に、待遇改善や自由な働き方を可能にする環境を整えることは重要なポイントです。さらには、エンジニアのメンタルサポートなども行うことで、貴重な人材を失うことを防ぐことにもつながります。

しかし、多くのITエンジニアを抱えるSES企業においては、一人一人の勤務状況やメンタル状況をタイムリーに把握し、フォローすることは容易ではありません。

このような悩みがある場合、メンタル状態、勤怠時間、有給取得の状況を自動で検知しアラートで知らせてくれる「Fairgrit®」を利用するのも効果的な方法です。

「Fairgrit®」は、SES企業の業務効率化を図るためのツールで、勤怠管理や労務管理、クライアントの営業先情報の管理など、幅広い業務に対応しています。

また、エンジニアのメンタル管理も行えるため、トラブルが発生する前に適切なフォローが可能となり、結果、離職率の低下につながります。企業の成長を阻害するIT人材不足という課題解決に寄与できる「Fairgrit®」を利用し、業務環境の改善を推進してみてください。

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