SES事業は「人材ビジネス」であると同時に、「プロジェクトマネジメント型ビジネス」でもあります。しかし、案件・人材・営業情報が分断されている企業も多く、稼働率や定着率、利益率の低下に悩むケースが少なくありません。

この記事では、SES事業を持続的に成長させるためのマネジメント手法を、実務的な視点で解説します。

本記事をお読みいただくことで、SES事業におけるマネジメントのポイントを抑え、自社SES事業のマネジメントに活かせるようになりますので是非とも最後までお読みください。

SESマネジメントとは？

SESマネジメントは、エンジニアリングサービスを提供する企業が、エンジニアのスキルや稼働状況、案件の進捗を効果的に管理し、最適なリソース配分を行うための手法です。

SES事業は、単に人材を提供するだけでなく、プロジェクトの成功に向けたマネジメントが求められます。これにより、エンジニアの定着率を高め、案件の利益を最大化することが可能になります。

SESマネジメントの重要な要素は、エンジニアのスキルや経験を把握し、適切な案件にアサインすることです。また、案件の進捗状況や利益率を常にモニタリングし、必要に応じて戦略を見直すことも不可欠です。

SESマネジメントの3つの柱

SESマネジメントは、エンジニアの定着率や案件利益を最大化するために不可欠な要素です。その中心となるのが「エンジニア管理」「案件管理」「組織・営業管理」の3つの柱です。

① エンジニア管理（スキル・稼働・定着）

SESマネジメントにおいて、エンジニア管理は非常に重要な要素です。エンジニアのスキル、稼働状況、そして定着率を適切に管理することで、プロジェクトの成功に直結します。

まず、エンジニアのスキルを把握することは、適切な案件へのアサインや育成プランの策定に欠かせません。スキルシートを定期的に更新し、エンジニア自身の成長を促す仕組みを整えることが求められます。

さらに、稼働状況の管理です。エンジニアがどのプロジェクトにどれだけの時間を費やしているかを把握することで、リソースの最適化が可能になります。

稼働率が低下している場合は、原因を分析し、必要に応じてプロジェクトの見直しやエンジニアの再配置を行うことが重要です。

② 案件管理（契約・利益率・進捗）

SESマネジメントにおいて、案件管理は非常に重要な要素です。特に契約、利益率、進捗の3つの観点からの管理が求められます。

まず、契約管理では、契約内容の明確化と遵守が不可欠です。契約書には、プロジェクトの範囲、納期、報酬などが詳細に記載されているため、これをしっかりと把握し、関係者全員が理解していることが重要です。契約内容に基づいた適切なリソースの配分が、プロジェクトの成功に直結します。

さらに、利益率の管理です。SES事業は人材ビジネスであるため、エンジニアの稼働率や単価が直接的に利益に影響を与えます。利益率を最大化するためには、エンジニアのスキルや経験に応じた適切な案件へのアサインが必要です。

③ 組織・営業管理（案件アサイン・営業進行・情報共有）

SESマネジメントにおいて、組織・営業管理は非常に重要な役割を果たします。

特に、案件アサインや営業進行、情報共有のプロセスが円滑に行われることで、エンジニアの稼働率や案件の利益率を最大化することが可能になります。

まず、案件アサインに関しては、エンジニアのスキルや希望を考慮しながら、最適なプロジェクトに配置することが求められます。これにより、エンジニアは自身の能力を最大限に発揮できる環境が整い、結果として定着率の向上にも寄与します。

さらに、案件の進行状況をリアルタイムで把握できる仕組みを導入することで、問題が発生した際にも迅速に対応できる体制を整えることが重要です。

エンジニアマネジメントの実践ポイント

SES事業においてエンジニアのマネジメントは、プロジェクトの成功に直結する重要な要素です。エンジニアが現場で孤立せず、チームとしての一体感を持つことが、定着率や生産性の向上に寄与します。

現場常駐でも“孤立させない”仕組みを作る

SES事業において、エンジニアが現場に常駐するスタイルは一般的ですが、その一方で孤立感を抱えることが多いのも事実です。

エンジニアがプロジェクトに専念するあまり、社内の情報や他のメンバーとのコミュニケーションが不足し、結果としてモチベーションの低下や定着率の悪化を招くことがあります。これを防ぐためには、エンジニアが孤立しないための仕組みを構築することが重要です。

定期的なオンラインミーティングやチームビルディング活動を通じて、エンジニア同士の交流を促進することが効果的です。これにより、現場での情報共有が活発になり、エンジニア同士のサポート体制も強化されます。

1on1・キャリア面談でエンジニアの定着率を高める

エンジニアの定着率を向上させるためには、1on1やキャリア面談が非常に重要な役割を果たします。これらの面談は、エンジニアとマネージャーとのコミュニケーションの場であり、個々のエンジニアが抱える悩みやキャリアの目標を理解するための貴重な機会です。

定期的に行うことで、エンジニアは自分の意見や要望を気軽に伝えられる環境が整い、職場への帰属意識が高まります。

1on1では、エンジニアの業務状況やスキルの向上について話し合うことができます。これにより、エンジニアは自分の成長を実感しやすくなり、モチベーションの向上につながります。

また、キャリア面談では、将来のキャリアパスや目標について具体的に話し合うことで、エンジニアが自分のキャリアに対するビジョンを持つことができ、長期的な定着を促進します。

スキルシートと案件情報を連動させる仕組みづくり

SES事業において、エンジニアのスキルシートと案件情報を連動させることは、マネジメントの効率化とエンジニアの定着率向上に直結します。

スキルシートはエンジニアの能力や経験を示す重要なツールですが、これを案件情報と結びつけることで、より適切な案件アサインが可能になります。

まず、スキルシートのデジタル化を進めることが基本です。エンジニアが持つスキルや資格、過去のプロジェクト経験をオンラインで管理することで、リアルタイムでの情報更新が可能になります。

次に、案件情報も同様にデジタル化し、スキルシートと連携させる仕組みを構築します。案件の内容や求められるスキル、進捗状況などを一元管理することで、エンジニアのスキルと案件のニーズをマッチングさせることが容易になります。

案件マネジメントの最適化

SES事業において、案件マネジメントは成功の鍵を握る重要な要素です。ここでは、案件のマネジメントの最適化のために必要な要素について解説します。

単価・稼働率・契約期間を可視化する

SESマネジメントにおいて、単価、稼働率、契約期間の可視化は非常に重要な要素です。これらの指標を明確に把握することで、企業はプロジェクトの収益性を高め、エンジニアの稼働状況を適切に管理することが可能になります。

まず、単価の可視化は、各エンジニアがどの程度の報酬を得ているのかを把握するための基本です。これにより、案件ごとの利益率を計算し、どのプロジェクトが収益を生んでいるのか、または逆に損失を出しているのかを明確にできます。

さらに、稼働率の可視化は、エンジニアがどれだけの時間をプロジェクトに費やしているかを示します。稼働率が低い場合、エンジニアのスキルやモチベーションに問題があるかもしれません。逆に、稼働率が高すぎる場合は、過労や燃え尽き のリスクが高まります。

営業・管理・経理の情報連携を自動化

SESマネジメントにおいて、営業、管理、経理の情報連携を自動化することは、業務の効率化と精度向上に直結します。これにより、各部門間の情報の流れがスムーズになり、意思決定の迅速化が図れます。

自動化の第一歩として、専用の管理システムを導入することが挙げられます。これにより、営業チームが獲得した案件情報が即座に管理部門や経理部門に反映され、各部門が同じデータを基に業務を進めることが可能になります。

例えば、営業が新たに契約を締結した際、その情報が自動的に経理システムに入力されることで、請求書の発行や収益管理が迅速に行えるようになります。

収益性分析による「案件ポートフォリオ管理」

SES事業において、案件ポートフォリオ管理は収益性を最大化するための重要な要素です。収益性分析を行うことで、各案件の利益率やコスト構造を明確にし、どの案件が自社にとって最も価値があるのかを把握することができます。これにより、リソースの最適配分や新たな案件の選定に役立てることが可能です。

まず、収益性分析を行う際には、各案件の単価、稼働率、契約期間を詳細に可視化することが重要です。これにより、どの案件が高い利益を生んでいるのか、または逆にコストがかかりすぎているのかを一目で理解できます。

また、収益性分析は単なる数字の把握にとどまらず、営業戦略や案件アサインの決定にも影響を与えます。高収益の案件にリソースを集中させることで、全体の利益を押し上げることができるため、経営判断においても非常に重要な役割を果たします。

組織・営業マネジメントの最適化

SES事業において、組織と営業のマネジメントは成功の鍵を握る重要な要素です。ここでは、組織・営業マネジメントの最適化のために必要な要素について解説します。

営業情報・案件情報を一元管理するシステムの導入

SES事業において、営業情報と案件情報の一元管理は非常に重要です。これにより、情報の分断を防ぎ、迅速な意思決定を可能にします。

特に、営業チームとプロジェクト管理チームが同じ情報を共有することで、案件の進捗状況や顧客のニーズをリアルタイムで把握できるようになります。

一元管理システムの導入には、まず現行の業務フローを見直し、どの情報がどのように流れているのかを把握することが必要です。その上で、必要な機能を持つシステムを選定し、導入を進めることが求められます。

例えば、営業活動の履歴や案件の進捗状況を一つのプラットフォームで管理することで、情報の透明性が高まり、チーム全体の連携が強化されます。

社内コミュニケーションの分断を防ぐ体制設計

SES事業において、エンジニアや営業、管理部門間のコミュニケーションが円滑であることは、プロジェクトの成功に直結します。

しかし、特にリモートワークや現場常駐が一般化する中で、情報の断絶や誤解が生じやすくなっています。これを防ぐためには、社内コミュニケーションの分断を防ぐ体制設計が不可欠です。

まず、定期的なミーティングを設定し、各部門の進捗や課題を共有する場を設けることが重要です。これにより、エンジニアが抱える問題や営業の状況をリアルタイムで把握でき、迅速な対応が可能になります。

さらに、社内のコミュニケーションを促進するために、チームビルディング活動や社内イベントを定期的に開催することも考慮すべきです。これにより、部門間の垣根を越えた交流が生まれ、信頼関係の構築につながります。

属人営業から“チーム営業”への転換

SES事業において、営業活動は非常に重要な役割を果たしますが、従来の属人営業では、特定の営業担当者に依存する傾向が強く、情報の共有やチーム全体のパフォーマンス向上が難しいという課題があります。

このような状況では、営業の成果が個人の能力に左右され、組織全体の成長を妨げる要因となります。そこで、属人営業から“チーム営業”への転換が求められます。チーム営業では、営業メンバーが協力し合い、情報を共有することで、より効率的かつ効果的な営業活動を実現します。

具体的には、営業チーム内での定期的なミーティングを設け、案件の進捗状況や顧客のニーズを共有することが重要です。

SESマネジメントにおけるよくある課題と解決策

SESマネジメントを行う上で、企業が直面する課題は多岐にわたります。これらの課題を理解し、適切な解決策を講じることが、エンジニアの定着率や案件の利益を最大化するためには不可欠です。以下に、よくある課題とその解決策を紹介します。

課題①：エンジニアとの信頼関係が築けない

SES事業において、エンジニアとの信頼関係を築くことは非常に重要です。

しかし、現場での孤立感やコミュニケーション不足が原因で、エンジニアが不安を抱えることが少なくありません。特に、プロジェクトに常駐するエンジニアは、会社との接点が限られるため、信頼関係の構築が難しくなります。

信頼関係を築くためには、まずエンジニアの声に耳を傾けることが必要です。定期的な1on1ミーティングやキャリア面談を実施し、エンジニアの意見や要望を把握することで、彼らのニーズに応える姿勢を示すことができます。

課題②：案件管理がスプレッドシート依存

SES事業において、案件管理がスプレッドシートに依存している企業は少なくありません。

スプレッドシートは手軽に情報を整理できるツールですが、案件が増えるにつれてその管理が煩雑になり、情報の正確性やリアルタイム性が損なわれるリスクがあります。

また、スプレッドシートは複数の担当者が同時に編集することが難しく、情報の更新が遅れることもあります。このような状況では、営業や管理部門間での情報共有が滞り、案件の進捗状況や問題点を把握するのが困難になります。

結果として、エンジニアの稼働率や案件の利益率が低下し、企業全体のパフォーマンスに悪影響を及ぼすことになります。

課題③：営業・管理間の情報共有が遅い

SES事業において、営業と管理部門の情報共有が遅れることは、プロジェクトの進行やエンジニアの稼働に大きな影響を及ぼします。

特に、案件の進捗状況やエンジニアの稼働状況がリアルタイムで把握できない場合、適切な意思決定が難しくなり、結果として利益率の低下やエンジニアの定着率にも悪影響を及ぼすことがあります。

この課題を解決するためには、情報共有の仕組みを見直すことが重要です。まず、営業と管理部門が同じプラットフォームを使用することで、情報の一元化を図ることができます。

例えば、プロジェクト管理ツールやCRMシステムを導入することで、案件の進捗やエンジニアの稼働状況をリアルタイムで把握できるようになります。これにより、営業チームは迅速に顧客への対応ができ、管理部門も必要な情報を即座に取得できるため、業務の効率化が図れます。

まとめ

この記事では、SES事業の特性を理解し、エンジニア管理、案件管理、組織・営業管理の3つの柱を中心に、実践的なマネジメント手法を解説しました。これらの手法を適切に活用することで、企業は稼働率や利益率の向上を図ることができます。

SES事業は複雑な要素が絡み合うため、マネジメントの重要性はますます高まっています。これらのポイントを踏まえ、自社のSES事業を持続的に成長させるための戦略を立てていくことが求められます。今後のSESマネジメントにおいて、この記事が少しでもお役に立てれば幸いです。