勤務時間に関連した裁量労働制とは?メリットや適用職種を解説!

働く時間を自分で決められる自由な制度と思われがちですが、実際には労働時間の扱いや管理方法に注意点があります。
そこで本記事では、裁量労働制における勤務時間の考え方や、企業・労働者双方が押さえておくべきポイントをわかりやすく解説します。
INDEX
勤務時間に関連した裁量労働制とは
裁量労働制は、労働者が自らの裁量で勤務時間を設定できる制度ですが、実際にはその運用にはさまざまな注意点が存在します。
この制度は、特に専門的な知識やスキルを持つ職種において導入されることが多く、労働者が自分の業務に最も適した時間に働くことを可能にします。
裁量労働制の基本的な考え方は、労働時間を労働者自身が管理することで、より効率的な働き方を実現することです。
例えば、プロジェクトの進捗に応じて必要な時間を確保したり、集中力が高まる時間帯に作業を行ったりすることができます。しかし、自由度が高い反面、労働時間の管理が難しくなることもあります。
裁量労働制と他の制度の違い
裁量労働制は、労働者が自らの裁量で勤務時間を決定できる制度ですが、他の労働時間制度と比較すると、その特性や適用範囲においていくつかの違いがあります。
事業場外みなし労働時間制との違い
裁量労働制と事業場外みなし労働時間制は、どちらも労働時間の柔軟性を提供する制度ですが、その適用範囲や運用方法には明確な違いがあります。
まず、裁量労働制は、労働者が自らの裁量で業務を遂行し、労働時間を管理できる制度です。これに対して、事業場外みなし労働時間制は、特定の業務を行う労働者に対して、実際の労働時間に関わらず一定の時間を「みなし」として労働したとみなす制度です。
具体的には、裁量労働制では、労働者が自分の業務に対する責任を持ち、成果に基づいて働くことが求められます。これにより、労働者は自分のライフスタイルに合わせた働き方が可能になります。
一方、事業場外みなし労働時間制では、労働者が外出先で業務を行う場合に、あらかじめ定められた時間を労働時間としてカウントするため、実際の労働時間が短くても、一定の時間が保障されるという特徴があります。
高度プロフェッショナル制度との違い
裁量労働制と高度プロフェッショナル制度は、どちらも労働時間に関する柔軟性を提供する制度ですが、その適用範囲や条件には明確な違いがあります。
まず、裁量労働制は主に専門的な業務に従事する労働者に適用され、労働者が自らの裁量で勤務時間を決定できる制度です。一方、高度プロフェッショナル制度は、特定の高度な専門知識や技術を持つ労働者に限定され、年収が一定額以上であることが条件となります。
また、裁量労働制では、労働時間の管理が比較的緩やかであり、労働者は自分の業務に合わせて自由に働くことができますが、高度プロフェッショナル制度では、労働時間の上限が設定されていないため、労働者は自己管理が求められます。
このため、裁量労働制は労働者に一定の保護を提供する一方で、高度プロフェッショナル制度は、より高い自由度と責任を伴う制度と言えるでしょう。
変形労働時間制との違い
裁量労働制と変形労働時間制は、どちらも労働時間に柔軟性を持たせる制度ですが、その仕組みや適用方法には明確な違いがあります。
まず、変形労働時間制は、特定の期間における労働時間をあらかじめ定め、その範囲内で労働時間を調整する制度です。
例えば、週の中で忙しい日とそうでない日がある場合、忙しい日に多く働き、余裕のある日に少なく働くことが可能です。この制度は、労働者が一定の時間内で働くことを前提としているため、労働時間の総量は法律で定められた範囲内に収まる必要があります。
一方、裁量労働制は、労働者が自らの裁量で勤務時間を決定できる制度です。具体的には、労働者が業務の進捗や成果に基づいて働く時間を自由に設定できるため、労働時間の管理がより柔軟になります。
フレックスタイム制との違い
裁量労働制とフレックスタイム制は、どちらも働く時間に柔軟性を持たせる制度ですが、その仕組みや目的には明確な違いがあります。
フレックスタイム制は、労働者が始業・終業の時間を自分で選べる制度であり、一定のコアタイム(必ず出勤しなければならない時間帯)が設けられています。このため、労働者は自分のライフスタイルに合わせて勤務時間を調整することが可能です。
一方、裁量労働制は、労働者が業務の進め方や時間配分を自ら決定できる制度です。具体的には、労働時間があらかじめ定められた「みなし労働時間」に基づいて評価されるため、実際の労働時間に関わらず、一定の時間が働いたものとみなされます。
裁量労働制のメリット
裁量労働制は、労働者が自らの裁量で勤務時間を決定できる制度であり、企業や従業員にとって多くのメリットがあります。
優秀な人材を獲得しやすい
裁量労働制の大きなメリットの一つは、優秀な人材を獲得しやすくなる点です。
現代の労働市場では、特に若い世代を中心に、働き方の自由度を重視する傾向が強まっています。裁量労働制を導入することで、企業は従業員に対して柔軟な勤務時間を提供できるため、働きやすい環境を整えることが可能です。
この制度は、特に専門的なスキルや知識を持つ人材にとって魅力的です。自分のペースで仕事を進められるため、効率的に業務を遂行できると同時に、プライベートの時間も大切にすることができます。
結果として、企業は優秀な人材を引き寄せることができ、競争力を高めることにつながります。
生産性の向上に繋がる
裁量労働制の大きなメリットの一つは、生産性の向上に寄与する点です。
この制度では、従業員が自分の働く時間を自由に設定できるため、各自のライフスタイルや仕事のスタイルに合わせた働き方が可能になります。例えば、集中力が高まる時間帯に重点的に業務を行うことで、効率的にタスクを進めることができるのです。
また、裁量労働制は従業員に自己管理能力を求めるため、責任感やモチベーションの向上にも繋がります。自分の時間を自分でコントロールできるという感覚は、仕事に対する意欲を高め、結果として生産性を向上させる要因となります。
さらに、業務の進捗状況を自分で把握しやすくなるため、無駄な時間を削減し、より効率的に仕事を進めることが可能です。
人件費を計算しやすい
裁量労働制の大きなメリットの一つは、人件費の計算が比較的容易である点です。
通常の労働時間に基づく賃金体系では、残業や休日出勤などの変動要素が多く、これらを正確に把握することが難しい場合があります。しかし、裁量労働制では、あらかじめ定められた労働時間に基づいて賃金が支払われるため、企業側は人件費を予測しやすくなります。
具体的には、裁量労働制では、労働者が自分の裁量で働く時間を決めることができるため、企業はその労働者に対して固定の賃金を支払うことができます。
このため、労働時間の変動に伴うコストの増減を抑えることができ、経営計画を立てやすくなります。
裁量労働制のデメリット
裁量労働制は、働く時間を自分で決めることができる自由な制度として注目されていますが、実際にはいくつかのデメリットも存在します。
従業員の労働時間が伸びる可能性がある
裁量労働制は、従業員が自らの裁量で働く時間を決定できる制度ですが、その自由さが逆に労働時間の延長を招く可能性があります。特に、業務の特性上、納期や成果に対するプレッシャーが強い職種では、自己管理が難しくなり、長時間労働に陥るリスクが高まります。
また、裁量労働制を導入した企業では、労働時間の管理が従来のように厳密に行われないため、従業員が「もっと働かなければならない」という心理的な圧力を感じることがあります。このような状況が続くと、労働時間が実際に増加し、過労やストレスの原因となることも少なくありません。
さらに、裁量労働制では、労働時間の上限が設定されていない場合が多く、従業員が自らの健康や生活を犠牲にしてまで仕事に没頭してしまうこともあります。これにより、仕事とプライベートのバランスが崩れ、結果的に生産性が低下することも考えられます。
制度導入に時間がかかる
裁量労働制の導入には、企業側にとって多くの準備と時間が必要です。
まず、制度を適用するためには、労働者の業務内容や職務の特性を十分に理解し、適切な基準を設ける必要があります。これには、労働者とのコミュニケーションを密にし、彼らの意見やニーズを反映させることが重要です。
さらに、裁量労働制を導入する際には、労働時間の管理方法や評価基準の見直しも求められます。従来の労働時間管理からの移行は、企業文化や業務プロセスに影響を与えるため、慎重に進める必要があります。
また、裁量労働制を導入するためには、労働基準法に基づく手続きや、労働者との合意形成も不可欠です。これらのプロセスには時間がかかるため、企業は早めに準備を始めることが重要です。制度導入にあたっては、労働者の理解と協力を得ることが成功の鍵となります。
チームワークを高めることが難しい
裁量労働制の導入において、チームワークを高めることが難しいという課題があります。
この制度では、各従業員が自分の裁量で働く時間を決定するため、個々の働き方が多様化します。その結果、チーム全体のスケジュールやコミュニケーションが取りづらくなることがあります。
特に、プロジェクトやチームでの協力が求められる業務においては、メンバー間の連携が重要です。しかし、各自が異なる時間に働くことで、会議や情報共有の機会が減少し、結果としてチームの一体感が損なわれる可能性があります。
さらに、裁量労働制では、個々の成果が重視されるため、チーム全体の成果を意識しにくくなることも一因です。従業員が自分の業務に集中するあまり、チームの目標や他のメンバーの状況に対する配慮が不足することがあるため、チームワークの強化が難しくなるのです。
このような課題を克服するためには、定期的なチームミーティングや情報共有の場を設けることが重要です。
また、チーム全体の目標を明確にし、個々の役割を理解させることで、協力し合う意識を高めることが求められます。裁量労働制を導入する際には、こうしたチームワークの維持・向上に向けた取り組みも併せて考慮する必要があります。
裁量労働制が適用される職種
裁量労働制は、特定の職種において適用される制度であり、主に専門的な知識や技術を必要とする業務に従事する労働者に向けられています。この制度は、労働者が自らの裁量で勤務時間を設定できるため、柔軟な働き方を実現することが可能です。
専門業務型裁量労働制
専門業務型裁量労働制は、特定の専門的な業務に従事する労働者に適用される制度です。
この制度では、労働者が自らの専門知識や技術を活かし、業務の遂行に必要な時間を自由に設定できるため、柔軟な働き方が可能となります。具体的には、研究開発やIT関連の職種、法律や会計の専門家などが該当します。
この制度の大きな特徴は、労働時間の管理が労働者自身に委ねられる点です。つまり、労働者は自分の業務に必要な時間を見積もり、その範囲内で働くことが求められます。
企画業務型裁量労働制
企画業務型裁量労働制は、主に企画や立案、調査、分析などの業務に従事する労働者に適用される制度です。
この制度では、労働者が自らの裁量で業務の進め方や勤務時間を決定できるため、柔軟な働き方が可能となります。具体的には、プロジェクトの進行状況や納期に応じて、労働者が自分のペースで仕事を進めることができるため、クリエイティブな業務において特に効果を発揮します。
この制度の導入により、企業は従業員の自主性を尊重し、モチベーションを高めることが期待されます。また、労働者にとっても、ライフスタイルに合わせた働き方ができるため、仕事とプライベートの両立がしやすくなります。
しかし、裁量労働制の特性上、業務の進捗管理や成果の評価が難しくなる場合もあるため、企業側は適切な評価基準を設けることが重要です。
裁量労働制を導入時に抑えておくべきポイント
裁量労働制を導入する際には、いくつかの重要なポイントを押さえておく必要があります。ここでは、各ポイントについて解説します。
裁量労働制を適用できない職種がある
裁量労働制は、特定の職種に対してのみ適用される制度であり、すべての業種や職務に導入できるわけではありません。
具体的には、労働基準法において定められた「専門業務型」と「企画業務型」の裁量労働制が適用される職種が存在しますが、これらに該当しない職種は制度の恩恵を受けることができません。
例えば、製造業やサービス業の現場作業員、営業職の一部など、業務の内容が明確に定められている職種は、裁量労働制の適用外となることが多いです。
これらの職種では、労働時間や業務の進捗を厳密に管理する必要があるため、裁量労働制の柔軟性が求められない場合が多いのです。
評価がややこしくなる可能性がある
裁量労働制を導入する際の大きな課題の一つは、従業員の評価方法です。
従来の労働時間に基づく評価から、成果や業務の質に基づく評価へとシフトする必要がありますが、これは容易ではありません。
また、裁量労働制を適用する職種は、専門的なスキルや知識を必要とする場合が多く、業務の成果を定量的に評価することが難しいこともあります。
例えば、クリエイティブな業務や研究開発などでは、成果がすぐに現れないことが多く、評価のタイミングや基準が不明確になることがあります。このような状況では、従業員のモチベーションが低下する可能性も考えられます。
労働時間が伸びやすい
裁量労働制の導入において、最も注意が必要な点の一つが、従業員の労働時間が伸びやすいということです。
裁量労働制は、労働者が自分の裁量で勤務時間を決定できる制度ですが、その自由さが逆に過重労働を招く可能性があります。
また、裁量労働制では、労働時間の管理が従業員自身に委ねられるため、自己管理ができない人にとっては、労働時間のコントロールが難しくなることがあります。
結果として、仕事の量が増えたり、納期に追われて長時間働くことが常態化してしまうことも少なくありません。このような状況は、従業員の健康やモチベーションに悪影響を及ぼす可能性があるため、企業側は注意が必要です。
まとめ
裁量労働制の導入には、優秀な人材を獲得しやすく、生産性の向上に寄与するなどのメリットがありますが、一方で従業員の労働時間が伸びるリスクや、制度導入にかかる時間、チームワークの維持が難しくなる可能性も存在します。
今後、裁量労働制を導入する企業や、制度を利用する労働者は、これらのポイントをしっかりと押さえ、制度の特性を活かしながら、より良い働き方を実現していくことが求められます。
裁量労働制を正しく理解し、活用することで、働き方改革の一環としての効果を最大限に引き出すことができるでしょう。

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