自社開発とは?自社で行うメリットやデメリットを解説!

自社開発とは、外部委託に頼らず自社で企画・設計・実装・運用までを一貫して行う開発体制を指します。意思決定が速くノウハウも蓄積しやすい一方、人材確保や技術選定など課題も多いため、導入にはメリットとデメリットの両面を理解することが大切です。
そこで本記事では、自社開発の基本概念から導入メリット、潜在的リスク、成功させるポイントまで、網羅的に分かりやすく解説します。
自社開発とは
自社開発とは、企業が外部ベンダーに委託せず、企画・設計・実装・運用までを社内チームで一気通貫させる開発方式です。要件変更に対する意思決定が速く、知財や業務ノウハウが社外に流出しないため、独自性を維持した競争優位を築けます。
さらに、セキュリティポリシーを細部まで自社基準で徹底でき、保守フェーズでも仕様意図を正確に共有できる点が魅力です。
ただし、採用・育成コスト、設備投資、品質保証体制の整備など長期的な資源コミットが不可欠であり、ROIを見極めた上で段階的に進めることが重要です。近年はDX需要の高まりを受け、内製化比率を高める企業が増えているとの調査報告もあります。
自社開発を行うメリット
自社開発には多くのメリットがあります。これから解説するメリットを理解し、自社に適した開発組織を作っていきましょう。
納期の融通が利きやすい
自社開発なら納期調整が社内判断だけで完結するため、営業部門や顧客からの仕様変更にも即応できます。
外注では契約再締結や優先度調整に数週間要するケースが多いものの、社内チームではデイリースクラムや臨時レビューで進捗を確認し、リソース再配置やスプリント計画変更を即日決定可能です。
さらに、要員配置権限が自社にあるため繁忙期には決裁を省略して追加稼働を確保でき、逆に閑散期には優先度の低い機能を後回しにしてコストを最適化できます。こうした柔軟性はBtoBサービスで要求されるSLAの厳守率を高め、顧客ロイヤルティ向上にも寄与します。
エンジニアとコミュニケーションが取りやすい
自社開発の大きなメリットの一つは、エンジニアとのコミュニケーションが取りやすい点です。外部の開発チームに依存する場合、情報の伝達や意思疎通に時間がかかることが多く、誤解やミスが生じやすくなります。
しかし、自社内で開発を行うことで、エンジニアと直接対話しながら進めることができ、迅速なフィードバックが可能です。
このような環境では、問題が発生した際にも即座に対応できるため、開発のスピードが向上し、最終的な成果物の質も高まります。また、エンジニア同士の連携が強化されることで、チーム全体の士気も向上し、より良いアイデアや解決策が生まれる土壌が整います。
自社のエンジニアを育成できる
自社開発の大きなメリットの一つは、自社のエンジニアを育成できる点です。外部委託では、プロジェクトごとに異なるチームが関与するため、ノウハウの蓄積が難しくなります。
しかし、自社で開発を行うことで、エンジニアはプロジェクトの全体像を把握しやすくなり、経験を通じてスキルを向上させることができます。
また、社内での知識共有が促進されるため、チーム全体の技術力も向上します。さらに、エンジニアが自社のビジョンや価値観を理解することで、より一体感のある開発が可能となり、結果として高品質な製品を生み出すことが期待できます。
自社開発を行うデメリット
自社開発には多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。これから説明するデメリットを理解し、対策を講じることが重要です。
人材の確保・育成に時間がかかる
自社開発を行う際の大きなデメリットの一つは、人材の確保と育成にかかる時間です。外部委託では即戦力となる専門家を短期間で雇用することが可能ですが、自社で開発を行う場合、必要なスキルを持ったエンジニアを見つけるのは容易ではありません。
また、採用した人材を自社の文化やプロジェクトに適応させるためには、時間と労力が必要です。さらに、技術の進化が早いIT業界では、常に新しい知識やスキルを学ぶ必要があり、育成には継続的な投資が求められます。
このように、人材の確保と育成は自社開発の成功に直結する重要な要素であり、慎重に取り組む必要があります。
システムの品質が担保されにくい
自社開発においては、システムの品質が担保されにくいという課題があります。外部の専門家や第三者機関によるレビューがないため、開発チーム内でのチェックが主な品質管理手法となります。
この場合、開発者自身のスキルや経験に依存することが多く、特に新しい技術や手法を取り入れる際には、品質が不安定になるリスクが高まります。
また、開発プロセスが属人的になりやすく、特定のメンバーが持つ知識や技術が他のメンバーに共有されない場合、システム全体の品質が低下する可能性もあります。エンジニアの流動性は高く、属人的な組織体制は命取りになるため気をつけましょう。
新しい技術の取り入れに時間がかかる
自社開発を行う際のデメリットの一つとして、新しい技術の取り入れに時間がかかる点が挙げられます。外部の専門家や企業と連携することで迅速に最新技術を導入できる場合に比べ、自社内での技術選定や導入プロセスはどうしても時間を要します。
特に、社内のエンジニアが新しい技術に対する理解を深める必要があるため、学習や実践にかかる時間が影響します。
また、技術の選定においても、既存のシステムとの互換性やチームのスキルセットを考慮する必要があり、これがさらなる遅延を招くこともあります。
このような状況を避けるためには、技術のトレンドを常に把握し、柔軟に対応できる体制を整えることが重要です。社内で勉強会を開いたり、社内コミュニケーションツールで専用チャンネルを立ち上げることが有効です。
自社開発を行う時の注意点
自社開発を成功させるためには、いくつかの注意点があります。ここでは、各注意点について解説します。
属人的なシステムにならないようにする
自社開発を進める際には、属人的なシステムにならないように注意が必要です。
属人的なシステムとは、特定の個人に依存した開発や運用が行われる状態を指します。このような状況では、その個人が退職したり、長期の休暇を取ったりすると、システムの運用や改善が滞るリスクが高まります。
そのため、開発プロセスやドキュメントを整備し、チーム全体で知識を共有することが重要です。また、コードレビューやペアプログラミングを取り入れることで、複数のメンバーがシステムの理解を深めることができ、属人化を防ぐ効果があります。
これにより、チーム全体のスキル向上にもつながり、より安定したシステム運用が実現できるでしょう。
人材の採用・育成コストをしっかりかける
人材の採用・育成コストをしっかりかけることは、自社開発を持続させる基盤となります。まず、求めるスキルセットとカルチャーフィットを明文化し、採用プロセスで業務課題に直結する技術試験やペア面接を実施してミスマッチを防ぎます。
採用後は、オンボーディング資料とメンター制度を整備し、半年以内にフルコミットできる環境を用意します。
また、研修費・資格取得補助・技術カンファレンス参加費を年間予算に計上し、定期的なリスキリングを支援することで離職率を抑制し技術水準を継続的に高められます。
この投資は一見高額ですが、外注依存による仕様伝達コストや品質事故の損失を減らし、長期的なROIを向上させます。
開発に関する知見のある人をPMに置く
開発に関する知見のある人をPMに置くことで、自社開発のスピードと品質が大幅に向上します。技術的バックグラウンドを持つPMは、要件定義段階で実現可能性を即時判断し、余分な再設計を防げます。
また、開発者とビジネス部門の言語ギャップを橋渡しし、仕様変更が発生しても計画とリソース配分を迅速に調整できます。
さらに、リスク識別と障害対応の優先度付けを的確に行うことで、ダウンタイム最小化とSLA達成率向上に寄与します。
定量指標を用いた進捗報告を経営層へ継続的に発信することで、組織全体の意思決定も加速します。結果として開発ロードマップと事業計画の整合性が高まり、投資対効果を最大化できます。
自社開発エンジニアとして採用すべき人の特徴とは
自社開発において成功するためには、適切なエンジニアを採用することが重要です。これから解説する特徴に当てはまる人材は、社内でも成果を上げる可能性が高く貴重な人材と言えるでしょう。
最新の知識や技術を学ぶのが好きな人
最新の知識や技術を学ぶのが好きな人は、変化の速いIT領域で自社開発を推進するうえで不可欠です。定期的にテックブログやカンファレンスから情報を吸収し、プロトタイプを素早く試せる好奇心は、新機能の検証期間を短縮します。
さらに、得た知見を社内勉強会で共有する文化を根付かせることで、チーム全体の技術レベルが底上げされ、継続的なアウトプットの質向上に繋がります。この姿勢はレガシー化を防ぎ、サービス品質を長期にわたり高水準で維持する効果も生みます。
さらに、技術選定時に複数の選択肢を提示できるため、コストと性能の最適バランスを事業側へ提案しやすくなります。結果として意思決定の質が高まり競争優位を創出できます。
コミュニケーションを取るのが得意な人
コミュニケーションを取るのが得意な人は、自社開発チームが部門横断で成果を出すうえで重要な潤滑油となります。開発者・営業・サポートなど専門性の異なるメンバー間で目的と制約を翻訳し、齟齬を未然に防ぐ能力は手戻りを削減します。
さらに、議論が対立した場合にもファシリテーターとして合意形成を促し、リリーススケジュールの遅延を回避できます。
オンライン会議やドキュメントでも要点を整理して共有できる人材は、リモート環境下でもプロジェクトの透明性と信頼感を高め、チームの士気とエンゲージメントを維持します。さらに、結果として顧客対応も円滑になり、サービス品質向上へ直結します。
自社のサービス開発に携わりたい人
自社のサービス開発に携わりたい人は、ビジョンへの共感と当事者意識が高く、長期的価値を生む動機付けが明確です。事業目標を自分ごと化することで、ユーザー体験や運用効率を自発的に改善し、継続的デリバリーの文化を牽引します。
また、KPIを踏まえた機能提案やプロダクトロードマップの議論にも積極的に参加し、組織内に複数のイノベーション種を生み出します。
さらに、困難な局面でも粘り強く課題に向き合う姿勢はチームの士気を高め、結果としてサービスの競争力と収益性を高める原動力となります。
このような人材は顧客フィードバックを重視し、データに基づく改善サイクルを自発的に回すため、ビジネス成長を加速させる効果も期待できます。
まとめ
自社開発は、企業が独自の製品やサービスを生み出すための強力な手段です。メリットとしては、納期の柔軟性やエンジニアとの密なコミュニケーションが挙げられますが、一方で人材の確保や技術の選定に関する課題も存在します。
成功させるためには、適切な人材育成やプロジェクト管理が不可欠です。自社開発を検討する際は、これらのポイントをしっかりと理解し、戦略的に進めることが重要です。

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