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『雇われ社長』とは?

みなさんは、『雇われ社長』という立場がどのようなものかイメージできますか?

会社がその活動をおこなうためには、お金が必要となります。何らかの形で資金調達をおこなう必要があるわけですが、株式会社の場合は『株式』を発行し、それと引換に資金の提供を受けます。

この『株式と引換に資金の提供をした人』は『株主』と呼ばれています。『株主』は何人いても構いませんのが、保有している株式の量に応じて発言力1)いわゆる『議決権』が変わってきます。もちろん多い方が強い発言権を持ちます。

つまり、会社の株式のすべて または 過半数を持っている人が、その会社の『オーナー』というわけです。

『社長』と聞くと、『会社に関するすべての決定権と責任を負う立場』と考える方が多いかもしれません。しかし、『社長』自身が『オーナー』でなければ、『オーナー』から『社長』という業務を委託されているに過ぎません。

つまりは『オーナー』の意向を無視するわけにはいかないのです。

前置きが長くなりましたが、今回は『雇われ社長』だったころの『オーナー』とのエピソードについて取り上げてみたいと思います。

『上場を目指せ』との指示

私が『雇われ社長』をやっていたとき、『オーナー』から“上場を目指すように”との指示を受けました。

それ自体の是非はさておき、気になるのはその理由です。当時の私は『オーナー』にその真意を聞いてみたところ……。

社員が喜ぶから!!
社員のためになるから!!

これが『オーナー』からの答えでした。

私としては時期尚早に感じていましたので、『上場を目指す』という方針には反対だったのですが……。なぜそう考えたのか、ご説明していきたいと思います。

デメリットを上回るメリットは存在するか?

私が雇われ社長だったとき、その会社の上場に反対した理由。それを一言で言い表せば、『無視できないほど大きなデメリットがあり、それを上回るメリットが存在しなかったから』となります。

その当時から、『中小企業で働くITエンジニアの労働環境を変える』というミッションを掲げていました。それを推進するのに、上場することによって発生するデメリットが障害になるのです。

膨大なコストがかかる

『上場する』といっても、タダではできません。さまざまなところで、多くのお金が必要となります。

例えば監査法人や証券会社に対して、年間で合計5,000万円ほどの費用を支払う必要があります。上場したら終わり……というわけではありません。上場維持のために、少なくとも年間5,000万、多ければ数億円から数十億円レベルの費用がかかると言われています。

これらの金額を捻出するのは、並大抵のことではありません。中小企業であればなおさらです。

もし『上場を目指す』という決定をしたのであれば、全社一丸になって『上場』という目標に向かいひた走ることになります。お金や時間など、会社が有するリソースのほとんどは『上場』のために使われることとなります。

その間、会社として掲げていた『中小企業で働くITエンジニアの労働環境を変える』というミッションの実現は停滞することとなります。無事上場したとしても、その歩みは鈍化することでしょう。万が一、上場できなければ……。すべては無駄になります。

経営者が株主を意識した経営をすることになる

上場すると、広く出資を募ることとなります。結果的に、多くの株主が会社と関係を持つことになります。経営サイドと同じ考えの株主ばかりとは限りません。経営者の方針と相反する株主が過半数の株式を取得したとしても文句は言えません。

株主は出資に見合った配当を得る権利を有していますので、そういった側面から会社経営に対してさまざまな介入がおこなわれることでしょう。経営サイドとしてもそれは無視できませんので、多くの株主から広く意見を聞き、それに応えていくことになります。

そのような事情から、上場後は経営者の『思い』を経営に直接反映させにくくなります。

『中小企業で働くITエンジニアの労働環境を変える』というミッションを実現するためには、中長期的な視点に立つ必要があります。仮に今現在の業績が芳しくなかったとしても、将来的に大きな収穫があるのであればやるべきなのです。

しかし、株主からすれば『今現在』は無視できません。持続的な業績向上への圧力がかかり、長期的な視野にたった経営はできなくなってしまう可能性も高くなります。

そうなったとき、はたして会社が掲げるミッションを実現することはできるでしょうか。そのミッションに共感して集まってくれたエンジニアにとって、どんなメリットがあるのでしょうか。

今がその時か、否か

このような状況もあり、私は『上場に対して時期尚早であり反対である』という考えに至りました。

例えば、大規模な設備投資を予定しているなど、手持ちのキャッシュや金融機関からの借入ではまかないきれないレベルのお金が必要であったら考えも違ったでしょう。あるいは、デメリットを上回るほど大きなメリットが存在していたなら、『上場する』という方針に賛同していたかもしれません。

しかし、そのようなものは見えてきませんでした。

オーナーともなんども話し合いを持ちましたが、双方ともに相容れず……。この『上場に対する考えの相違』がきっかけとなり、『雇われ社長』の離任へと繋がることとなりました。

一番恩恵を得られるのは誰か

さて、『上場する』とした場合に、一番恩恵を受けるのは誰でしょうか。

さまざまな意見があるかと思いますが、私は『株式を100%保有しているオーナー自身である』と考えています。

皆さんは『上場ゴール』という言葉を聞いたことがありますか?

オーナーが会社の上場を目指してひた走り、無事に上場できたらその保有株式を売り払う。
結果、数億円から数十億円レベルの売却益を得る。

このようなケースを、『上場ゴール』などということがあります。

主としてベンチャー企業において、この『上場ゴール』を目的とされている方も多くいらっしゃるようです。もちろん、それ自体は否定しません。数億円から数十億円レベルの利益を得るというのは非常に魅力的なことでしょう。

『上場ゴール』よりも大切なこと

私自身、エージェントグローのオーナーであり社長です。上場ゴールを目指し、数億円から数十億円レベルの利益を得ようと思えばできる状況にあります。

でも、エージェントグローは上場を目指しません。

現時点において、エージェントグローにとって上場はデメリットが上回っています。『中小企業で働くITエンジニアの労働環境を変える』というミッション実現のためには、『上場』した結果生じる変化は足枷にすら感じます。

今後状況が変わり、私を含めた従業員や会社全体にとってメリットの方が大きくなったなら……。会社のさらなる成長のために必要な『手段』として、『上場する』という選択肢を選ぶかもしれません。

もしも皆さんの勤めている会社でオーナーが上場を目指し始めたら……。しかも、大規模な設備投資の予定もなく、資金調達の必要性もなかったとしたら……。

それは、気を付けた方がよいサインかも知れません。

注訳   [ + ]

1. いわゆる『議決権』
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河井 智也
河井 智也

Javaエンジニアとして2つのITベンチャー企業でキャリアを積む。
2013年2月、貿易商社に入社し、グループ会社の立ち上げに携わる。
2013年6月から同社の代表取締役に就任。

独自に編み出した『スカウト採用』を用いて、3年間で従業員1名から70名に拡大させる。

2016年4月に独立のため退任し、同年5月に株式会社エージェントグローを設立。
創業1年半で100名以上のエンジニアを採用し、会社は急成長。
面接実施人数は1500名以上、応募者の内定承諾率は80%を超えている。

「中小企業で働くITエンジニアの労働環境を変える」をミッションに掲げ、報酬・賞与の透明化と適正化、エンジニアに案件参画の決定権を与えるなどミッション実現に向けて取り組んでいる。

趣味は読書。ビジネス書を中心に2600冊以上を読破。

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